代表的なゴムの種類と特徴について、6項目を10段階で評価しご紹介します。
用語解説
- 機械強度:引張強さ、伸び、引裂強度が優れている度合い
- 耐摩耗性:摩擦や衝撃による損傷耐性
- 耐油性:ガソリンや軽油に対する膨潤耐性
- 耐酸・アルカリ性:酸やアルカリ溶液に対する性状変化耐性
- 耐候性:屋外使用における変形、変色、劣化耐性
- 耐溶剤性:酢酸エチル、アルコールなどに対する溶剤耐性
各数値は目安であり、同じゴムでも変化します。
NBR|ニトリルゴム
石油やナフサから工業的につくる合成ゴムで、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体です。
耐油性の優れたゴムの代表で工業向け製品に多く使用されています。耐油性以外でも耐熱性や耐摩耗性に優れています。対して耐オゾン性、耐寒性に劣ります。
結合ニトリル量で、低・中・中高・高・極高ニトリルの5段階で分類され、中高ニトリルが汎用のNBRとなります。ニトリル量が高くなると耐油性や耐摩耗性が向上し、対してニトリル量が低くなると耐寒性が向上します。
HNBR|水素化ニトリルゴム
石油やナフサから工業的につくる合成ゴムで、HNBRはNBRの耐オゾン性、耐熱性を改良したゴムとして開発されました。
耐オゾン性、耐油性、耐摩耗性、耐熱性、耐候性に優れたゴムで工業向け製品に使用されています。対して耐寒性、コスト面ではNBRに劣ります。
HNBRは一般に水素化NBRと表記されますが、正確にはジエンを含んだオレフィンと耐油性基を含んだ特殊ゴムです。NBRを水素化するとエチレンとアクリロニトリルの共重合体となりゴムではなく樹脂となります。
EPDM|エチレンプロピレンゴム
石油とナフサから工業的につくる合成ゴムです。エチレンとプロピレン、ジエン系ゴムとの三元共重合体です。
主鎖は飽和結合からなり、酸化や劣化しにくい特性があります。
耐候性が非常に優れています。耐老化性、耐オゾン性、酸やアルカリに対する耐性も優れています。対して耐油性や引裂強度が劣っており、金属に対して難接着であります。
Q|シリコーンゴム
石油やナフサから工業的につくる合成ゴムで、シロキサンを主鎖とし、化学的に安定した特性を有します。
耐熱性、耐寒性、耐候性が非常に優れています。対して引張強さ、引裂強度が劣っています。
工業分野だけでなく医療や食品関係など広範囲な分野で使用されています。
FKM|フッ素ゴム
石油やナフサから工業的につくる合成ゴムで、フッ化ビニリデン系のフッ素ゴムをFKMと表記します。
共重合体によって耐薬品性や低温性を向上させます。
耐油性、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性が非常に優れたゴムで、自動車や化学プラント、半導体など多岐に使用されています。対して原料ゴムが高価であり、高充填できないためコスト面では他ゴムに劣ります。
CR|クロロプレンゴム
石油やナフサから工業的につくる合成ゴムで、耐油性、耐候性を狙いに開発され、全体的にバランスのとれたゴムです。構造はクロロプレンが重合しています。
化学構造に塩素基を有するため難燃性に優れており、耐油性、耐候性にも優れています。対して電気絶縁性に劣ります。
接着性が良く、接着剤としても使用されます。
SBR|スチレンブタジエンゴム
石油やナフサから工業的につくる合成ゴムの中で最も多く生産されています。スチレンとブタジエンとの共重合体で、天然ゴムの代用として開発されました。
天然ゴムより優れた耐摩耗性を有し、機械強度も優れています。対して耐油性や耐熱性、耐候性などは他合成ゴムより大きく劣っています。
ACM|アクリルゴム
石油やナフサから工業的につくる合成ゴムで、アクリル酸エステルの共重合体です。
高温域での耐油性に優れており、耐熱性も優れています。対して機械強度、耐寒性、加工性が劣っており、耐水性やエステル系合成油などの耐溶剤性が劣ります。
NR|天然ゴム
ゴムの木からとられる樹液(ラテックス)を元につくられます。
最もゴムらしい弾性を持ち、耐摩耗性にも優れています。内部発熱が低いことからトラックなどの大型タイヤに多く用いられます。対して耐候性、耐油性などは合成ゴムに大きく劣ります。
IR(イソプレンゴム)は天然ゴムと同じ化学構造の合成ゴムであり、天然ゴムの代用として使用されます。